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「ホームレスになってそうな人」
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作成日時 : 2008/05/08 20:09
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刺激的な題であるが、5月8日、読売新聞から配信されたニュースである。ネットのニュースは早いので、テレビでは、たぶん夕方のニュースになるのだろう。
記事を読みながら、救い難いという印象をぬぐい得なかった。おそらく、このニュースを書いた者すらも無意識に前提している差別意識、そして、大勢のニュースを読む一般読者もまた、何の疑いもなく読み流し、自らの内なる差別意識に気づかないだろうことが、容易に想像できるからだ。
何はともあれ、以下、読売の配信した記事を紹介する。この記事が、無意識のうちに前提している差別意識に、あなたは気づく事が出来るだろうか。記事を読みながら、ふつふつと湧いてくる憤り。我々の社会は、いつからこのような歪んだものになったのだろうか。
【
「ホームレスになってそうな人」卒業文集に生徒名…福井の中学
5月8日3時9分配信 読売新聞
福井県坂井市の市立春江中学校(林清一郎校長)で、今春の卒業文集に「将来ホームレスになってそうな人」として生徒の実名が掲載されていることが分かった。
保護者らの指摘で発覚し、市教委は7日、文集の回収を指示し、同校も、該当部分を削除して文集を作り直すことにした。
同校によると、文集は、1学年8クラスの各クラスごとに生徒主体で作成。このうち1クラス(35人)が「優しそうな人」など19項目について、投票に基づく男女別上位3位のランキングを掲載。「ホームレスになってそうな人」には、男子3人、女子は2位と3位が複数いて、11人の名前があげられていた。
林校長は「傷つけてしまった生徒や保護者の方に申し訳ない」と話している。 】
校長の、「傷つけてしまった生徒や保護者の方に申し訳ない」という表現は、ホームレスを悪しき存在と前提するところから生まれる。むろんそのことに、校長自身気づいていないのだ。このような発言に見られるように、教育の世界は、実に差別的な意識に満ち満ちている。それが、いわゆるいじめ問題の誘因なのだが、教育現場にいる当事者達がまるで気づいていないようだ。冗談ではない。あんたの発言によって傷つけてしまう、ホームレスにこそ謝るべきである。「ホームレスになっていそう」と名指しされることで「傷つけてしまった」という考えに含まれている差別意識、その差別意識にまるで気づいていない無知さ加減、「こんなのが校長か」と考えるのは、私だけなのだろうか。
「ホームレスになってそうな人」という項目を設け、それで投票する生徒の意識の前提になっているのも、そういう差別的な意識だ。生徒や保護者に謝る前に、教育者なら、そんな生徒の間違った意識をこそ指摘し、正すべきなのだ。ところが、生徒と同じ地平に立っている教育者には、そもそも問題が見えないから、それが可能ではない。こんな状況を見て、うんざりしているのは私だけだろうか。
「ホームレスになってそうな人」という表現の背後にある、抜き難い差別意識こそが、例えば、ホームレスに対する虐待や殺人にまでつながっていることに、人々は何故気づかないのだろう。それに気づかず、このニュースを読み流す人は、やはり、差別意識を、自らも気づかずに持っているのだ。そんな親は、「勉強しないと、ホームレスになるよ」などという事すら、子供に話すのかも知れない。それは、もはやホームレスに対する虐待への教唆であり、拍手であり、遠回しの激励ですらあるのだ。
親鸞上人の悪人正機説には、人が人として生きている状況に対する深い認識がある、と指摘したのは吉本隆明である。人として生きて、こうありたいという希望や努力、しかし、それとはまったく別の人生を生きてしまうのが人の世の常だと、吉本は考える。その、自力本願的生き方がたまたま成功した人間の傲慢さを、もっとも仏の本願から遠いものとしたのが、いわゆる悪人正機説なのだ。いわゆる国家官僚と言われる人や、一部政治家の、時々顔をのぞかせる思い上がった言動を思い起こせばいい。彼らは決して気づかないだろうが、それは、本当は可哀想なことである。仏に見離される前に、いずれ周囲の人々、例えば家族に見離され、友人を失う。
たまたま普通の生活を営めていることと、あるいは社会の成功者となって贅沢三昧の生活をしていることと、また様々な困難を得てホームレスの生活をしていることと、いったいどれほどの違いがあるというのだろうか。まったく同じである。例えば水が、たまたま氷だったり雪だったり、水蒸気だったり霧だったり雲だったり、そんな違いが何の意味を持つか。何の意味も持ちはしない。
我々の社会は、実に歪んだ社会である。その歪みに気づき、少しでも是正しようと思わなければ、いじめ問題の根本的解決は絶対に不可能だし、ホームレスに対する虐待も決してなくなりはしない。子供達は親の鏡だ。「ホームレスになってそうな人」などという設問を、何の疑問もなく作らせているのは、実は我々大人の意識なのだ。そのことに気づき、発言する教師が、さて、何人いるだろうか。
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